■男性の育児休業の義務化が議論されている理由
10年ほど前の日本の育児休暇取得状況は女性が89.7%、男性が1.6%と極めて低いものでした。
近年ではわずかに増えましたが、それでも男性の育児休業を取得している割合は労働者全体で見て5%程度にとどまっています。
企業ごとに見れば、0%のところも少なくありません。
政府では少子化対策のため、男性の育児休暇を促進したいと考えており、一部では義務化すべきではという議論も起こっています。
ですが、それに対して中小企業の7割以上が反対を示しているのです。
日本では中小企業の割合が99.7%を占めるため、日本企業の7割以上が男性が育児休暇を取得するのは困ると考えていることがわかります。
■育児休暇になぜ反対なのか
中小企業が男性の育児休暇に反対する理由としては、やはり、少子高齢化に伴う人手不足が挙げられます。
今の時点でもギリギリの人数で仕事をしているのに、育児休暇を取られては業務が成り立たなくなると懸念しているためです。
育児休暇中に臨時で契約社員やアルバイトを雇いたくても、人手不足の時代には採用できるとも限りません。
少子化対策のための男性育児休暇の促進が、少子化による人手不足で阻まれているのが現実です。
■育児休暇取得が促進されない実情
中小企業でも、男性の育児休暇を導入しているケースはあります。
ですが、実際にはほとんど活用されていない現実があるのです。
育児休暇を取得した後、自分のポジションが維持されているか不安、給料が減ったら生活できない、子供の教育資金に関わるといった心配をして取得できない男性も少なくありません。
また、上司に育児休暇を取得したいと言いにくい、相談しても仕事を回すうえで困るからと思いとどまるように言われたケースも多いのが実情です。
■世界の男性育児休暇事情
ヨーロッパを中心に男性でも育児休暇制度が設けられています。
取得率を見てみると、イギリスでは男女ともに12%と低く、ドイツでは女性81.5%に対し、男性18.5%、オランダは女性25%弱と低めなのに対し、男性は18%です。
福祉先進国である北欧諸国はどうでしょうか。
ノルウェーでは女性94%、男性89%と高く、スウェーデンでも女性87%、男性78%と高くなっています。
■男性の育児休暇取得率が高い北欧の実情
ノルウェーでも男性の育児休暇取得率は1993年まではわずか5%程度でしたが、2012年以降に男女とも90%を超えるようになりました。
その契機となったのが、パパ・クオータ制度です。
育児休暇の一定期間をパパに割り当てる制度で、男性が育児休暇を取らないと育児休暇や給付金をもらう権利が消滅してしまうペナルティが設けられました。
給付金は給与の80~100%と極めて高いため、取得促進にもつながりました。
ノルウェーを真似て、スウェーデンでもパパ・ママ・クオータ制度が導入されたことで、育児休暇取得率が男女ともに80%前後まで上昇したのです。