アンコンシャス・バイアス

アンコンシャス・バイアス(unconscious-bias)とは・・・過去の経験や周りの環境などから、自分自身では気付かないうちに身に着いたものの見方や捉え方の偏り。日本語だと「無意識の偏見」と訳されることが多い。先入観による思い込みなどが、組織運営や仕事において、適切な判断や意思決定を妨げているのではないかとされている。

「アンコンシャス・バイアス」の事例

アンコンシャス・バイアス
近年、ダイバーシティ(個々の特性や違いを生かし、多様な人材を積極的に活用しようという考え方)の推進に取り組む企業などの間で注目されている。

考える前に、瞬間的かつ無意識に生じる思考プロセスの一つで、コントロールすることが難しいとされている。

例として、「若者はフットワークが軽い」「高齢者は頑固だ」「女性は優しく対応してくれる」
などの思いこみや固定観念が挙げられる。
これらは時として、差別する意図がなくとも、結果的に、他の人の自由な発言や活躍を妨げる要因となり得ると言われている。
例えば、能力があり、「もっと仕事がしたい」と考えている子育て中の女性に対し、上司が
「子育て中の女性に重要な仕事は任せられない」という意識の下、女性の仕事を減らすよう配慮することは、その能力を発揮する機会を奪い、意欲をそぐ可能性がある。
アンコンシャス・バイアスがもたらす仕事上での不利益をなくそうと、最近では、従業員に対し、自身のアンコンシャス・バイアスを意識させる研修に力を入れる企業も出てきている。




「アンコンシャス・バイアス」は、いくつかのタイプに分けられる。

代表例が、以下のようなものだ。

●正常性バイアス

不測の事態が発生した際、無意識のうちにそれを正常の範囲内であるととらえ、心を平静に保持しようとするメカニズムのこと。
自分に都合の悪い情報やデータを無視・過小評価して「自分は大丈夫」、「うちの会社には関係ない」、「ただの偶然だ」などと思い込むことである。
目の前にある重要な問題への対処が遅れてしまうという危険性をはらむ姿勢だ。

 

●集団同調性バイアス

集団同調性バイアスとは、ほかの人と同じことをすれば間違いないだろうと思い込み、周りにいる人に同調しようとすること。
「みんなが言っている」、「うちの会社ではこうしている」など、所属する集団内での常識や主流となっている考え方に同調すること。
また周囲にも同調するよう強いることである。
●権威バイアス
 「社長や管理職に就いている人などの意見は正しい」と思い込むこと。
 組織におけるランクの高い人の意見が優先され、ランクが低い人の意見はたとえ有益でも無視されてしまいます。
 これによって社員は、自らが考える力を失うので成長機会が奪われ、モチベーションも下がり、ひいては組織全体の推進力が低下してしまうのです。

●ステレオタイプバイアス

性別、年齢、国籍、職業といった属性に対する先入観や固定概念を指す。

「長距離ドライバーは男性の仕事」、「外国人は自己主張が強くてマイペース」、「ゆとり世代は指示待ち人間」など、
根拠のない思い込みや狭い範囲から得た知識をもとに決めつけてしまう姿勢のことといえる。

 

●確証バイアス

自分の意見や信念、価値観、仮説などの正しさを証明する情報のみ集め、反証となるデータや反対意見は無視・排除する姿勢のことである。

 

●ハロー効果

ある人物・事象を評価する際、目立つポイントだけを注視して偏った判断をしてしまう姿勢である。

例えば、「学生時代の部活が自分と同じなので、いい人物に違いない」といった考え方がこれに相当する。
本質を見ず人物・事象を評価することになり、採用・配属時のミスマッチなどを引き起こす。

近年、政治家・著名人の失言をきっかけとして性差別や偏見が注目されるケースが増えている。

●アインシュテルング効果
慣れ親しんだ解決方法を採用して、別の解決方法を無視してしまうこと。
たとえば「チェスや将棋で定石にこだわってしまい、より良い方法がある点に気付かず相手に負けてしまう」などです。

 

●職場における「アンコンシャス・バイアス」

「お茶くみは女性の仕事」、「女性は結婚・出産を契機に退職する」、「男性は稼いで女性は家庭を守る」、「男性が育児休暇を取るなどもってのほか」など、
男女の役割を固定して考えている者は多い。

「若手は雑用からが基本」、「今どきの若者には根性がない」、「ゆとり世代はプライドが高い」、「昭和生まれの社員は考えが古くて融通が利かない」、「年配の社員はパソコンを使いこなせない」など、年齢や世代に対する思い込みも根強い。

また、「障がい者に難しい仕事は任せられない」、「大企業からの転職者なのでキッチリとした仕事ができるはず」、「LGBTQ+の人たちは何を考えているかわからない」、「彼は血液型がA型なので神経質だ」など、相手の属性から能力や特性を決めつけてしまうこともある。

「自分の意見や立場を守ろうとして相手の話を遮ったり無視したりする」、「普通、こうするでしょう、と自身の価値観を押しつける」など、一方的な態度で周囲と接する者も存在する。

 

●人事評価における「アンコンシャス・バイアス」

偏見に基づいて相手を判断・評価する人も存在する。「残業や休日出勤の多い者を“仕事に熱心”と評価する」、

「アフター5の飲み会に付き合わない者は職場に不満があるのではと考える」、「気に入った部下が失敗しても問題視しない」などだ。

 

採用における「アンコンシャス・バイアス

「体育会系なので根は真面目」、「女性は営業職や管理職に向かない」、「介護や育児と仕事の両立は難しい」、

「前に勤めていたのが中小企業なのでたいして期待できない」など、相手の出自・現状などから能力や性格を断定し、採用・非採用が決められてしまうケースがある。

「アンコンシャス・バイアス」が企業や従業員にもたらす悪影響とは

アンコンシャス・バイアス
採用人事、ビジネスの現場、人物評価などの各シーンにおいて、さまざまな意思決定に「アンコンシャス・バイアス」は反映されてしまう。
結果として、望ましくない人材の採用・配置・昇進や職場の雰囲気悪化など、多くの影響を及ぼすことになる。

 

●個人やチームに対する影響




マネージャーが「アンコンシャス・バイアス」を持って部下に接すると、社員のストレス増大とモチベーション低下、上司・部下間の関係悪化などが生じる。

仕事のアサインに偏見・差別が混じれば、優秀な人材の成長機会が奪われ、昇進も遅れるといった事態が起こりうるだろう。

また意思決定の際に、管理職が「多数派こそ正しい」と思い込んで少数派を無視したり、逆に自分の考えに固執して周囲の意見を軽視したりすることで、チームとしてのモチベーションも下がることになる。

 

●組織に対する影響

部門のリーダーや経営層の意思決定が「アンコンシャス・バイアス」によって左右されることの影響は、さらに深刻だ。企業全体としてモチベーションが下がり、生産性も低下するだろう。

採用や評価といった人事領域が「アンコンシャス・バイアス」に支配されると、優秀な人材を獲得できないばかりか、「採用されるのは同じようなタイプの人材ばかり」、「昇進するのも同じタイプ」といった弊害が起きる。

「アンコンシャス・バイアス」を放置することで、偏見や差別が組織風土として定着してしまい、企業イメージの悪化を招くだろう。最悪の場合はハラスメント訴訟にまで発展し、ブラック企業とのレッテルを貼られてしまう可能性も大だ。

 

●ビジネスチャンスの損失

斬新なアイディアが生まれる背景には、企業内における価値観の多様性がある。イノベーションやビジネスのグローバル化を進めるうえで、多様な人材は何より大切だ。「アンコンシャス・バイアス」によって人材タイプが同一化すると、企業として拡大・成長することは困難となるだろう。

またビジネスパートナーを選択する際に、「社長が20代というのは問題だ」、「歴史のある企業だから心配ない」といった偏見、排他的な考え方、思い込みを持っていると、貴重なビジネスチャンスを失う可能性もある。

企業や従業員ができる「アンコンシャス・バイアス」をなくすための対策とは

 

アンコンシャス・バイアス
数多くの弊害をもたらす「アンコンシャス・バイアス」は、企業内からなくさなければならない。
近年は、その方策が研究され、組織的な対策を進める企業も増えている。

 

●個人およびチームとしての取り組み

「自分は公平・平等に周囲を見ている」と思っている人は多いだろうが、そういう人でも無意識に偏見を抱いているからこそ「アンコンシャス・バイアス」という概念が注目されているといえる。

よって、まずは自分の中に“無意識の偏見”が存在することを認めるのが第一のステップとなる。

そのうえで、「自身が抱いている偏見と向き合う」、「これまで社会や社内で常識とされてきたことを無条件に受け入れるのではなく疑問を抱く」、「自分の周囲にも偏見を抱いている人がいると認識する」、「言動を改善する」など、少しずつ「アンコンシャス・バイアス」の払拭に努めたい。

また「アンコンシャス・バイアス」は、表面的な理解だけでは不十分な成果しか出せず、一個人が職場全体の悪しき慣習を改善することも難しい。

いま部内や課内でどんな「アンコンシャス・バイアス」が問題となっているのか、具体的な事例に即した形で、チームとしての取り組みも進めたいところである。
誰もがアンコンシャスバイアスを持っている

アンコンシャスバイアスは特定の人だけが持つものではなく、誰もが持っているといえます。日常生活の多様な場面で本人も気付かないうちに生み出されるため、無意識のうちに人間関係にストレスを生み出し、円滑な集団生活の妨げになる場合もあるのです。

さらに組織内の推進力を阻むというネガティブな影響にもつながります。

アンコンシャスバイアスを生み出すもの

●エゴ

 「些細なことでもそれによって自分を否定されてしまうのではないか」という気持ちになり、自己を防衛するため偏見や思い込みをもって行動してしまうこと。

 自己を正当化したいという気持ちや自己防衛心の表れだといえます。

●習慣や慣習

 時代遅れになったり変化に対応できなくなったりしているにもかかわらず、気付かずに変化させず「これまで」に固執してしまうこと。

 習慣や慣習に縛られると、組織内部のストレスや違和感を増大させます。

●感情スイッチ
 とらわれやこだわり、劣等コンプレックスや不安感を呼び起こす感情のポイントのこと。
 
 人は感情スイッチを刺激されると、本能的に自己防衛のために平常心を保てなくなります。

 

 結果、周りの人や現状を客観的に捉えられず、人を攻撃するような行動を取る場合もあるのです。