アルコール依存症

アルコール依存症とは、長期間にわたってアルコールを大量に摂取し続けることによって、アルコールを摂取しないといられなくなる状態に陥る病気のことです。アルコールは適量の摂取であれば深刻な健康被害を引き起こすことはありませんが、大量の摂取を続けると脳の仕組みが変化し、猛烈にアルコールを欲するようになります。

アルコール依存症になると、気持ちの高ぶりやイライラ感が生じ、動悸や発汗、手の震え、頭痛、不眠などの身体症状が現れ、アルコールによる肝障害などを発症するばかりでなく、朝から飲酒をする、仕事中に隠れて飲酒をするなど社会生活に大きな支障をきたすケースも珍しくありません。

 ■なぜアルコール依存症になる?

アルコール依存症 

アルコールをまったく飲まない人がアルコール依存症になることはありません。

長期間にわたってエチルアルコールという依存性薬物を過剰に摂取してきたことが原因です。 

■飲酒量を減らす方法では成功しない

 飲酒が原因で発症するわけですから、アルコール依存症を確実に克服する方法があるとすれば断酒になります。

禁煙にも言えることですが、意志が強いほど成功率は高くなり、逆に意志が弱いと我慢できなくなって、再び手を出すようになるでしょう。

「絶対に飲まない」という強い意志がなければ、アルコール依存症から脱却することはできません。 

段階的に少しずつ飲酒量を減らしていけば、アルコール依存症を克服できると考える人は多いです。

毎日飲んでいた状況から週に5回⇒3回というように減らしていく方法は効果的に思うかもしれませんが、そもそも飲酒量を調整できる人はアルコール依存症にはなりません。

お酒の量をコントロールする節酒、また一定期間は飲まないと決める禁酒などの対策ができるのは、アルコール依存症になっていない人だけです。

お酒は好きだけど依存体質までには至らないという人なら、健康維持のために節酒や禁酒をすることが可能です。

一方で依存体質になっているなら、断酒以外でアルコール依存症は克服できません。 

 

■断酒する決意をするために大切なこと

 

「酒は百薬の長」と言われるのは適量を飲んだ場合であり、過剰に飲んで良いことは一つもないです。

大量に飲みすぎてしまえば、肝臓を傷めることは誰もが知っています。

ほかにも睡眠の質を低下させる、集中力を保てなくなる、生活習慣病を促進させる、などの問題があります。

さらに怖いのはお酒の力により、誰かに暴力を振るってしまうことです。

過度の飲酒をすれば正常な判断力が失われるので、お酒を飲んだ状態でクルマを運転するような人も出てきます。

お酒は健康を阻害するだけでなく、人間の理性をも破壊してしまうのです。

断酒を成功させるためには、お酒の怖さを本人が自覚する必要があります。




本人がアルコール依存症から抜け出す覚悟をしなければ始まらないのです。

 

■医療機関で治療をする選択肢も

 

本人がアルコール依存症を克服したいと本気で考えているなら、医療機関で治療をする選択肢もあります。

依存症とは文字どおり、依存体質を自分でコントロールできない状態です。

アルコール依存症を発症させる人の多くは、自分にとってお酒は必要だと考えています。

お酒を飲まないと対人関係がうまくいかない、緊張して人前で話せない、夜に眠られなくなる、などと考えています。

確かに少量のお酒であればメリットを期待できますが、飲みすぎると逆効果になってしまうのです。

 

■アルコール依存症の治療方法

アルコール依存症治療の目標は、原則的にはアルコールを一切断つこと(断酒)です。

まずは外来治療から試みますが、通院では断酒がなかなか困難な場合、あるいは、内科合併症が重篤な場合には、入院治療の適応となります。

治療にあたっては、まずはさまざまな離脱症状を緩和するために断酒初期のみ抗不安薬を投与します。

アルコール依存症の離脱症状は数日~2週間続くとされており、離脱症状が落ち着いた後は断酒を継続するためのリハビリテーションが行われていきます。

治療の進め方は病気を抱える人の重症度や社会的な背景によっても異なりますが、誤った飲酒行動を正すための認知行動療法を集団療法の形で実施し、補助的に、アルコールを摂取すると気分が不快になる作用を持つ抗酒剤や、飲酒欲求が多少とも緩和する抗渇望薬の投与も行います。

なお、患者が断酒という治療目標に同意しない場合には、ひとまず戦略的に減酒を試みてもらうことで、まずは治療の継続を優先することもあります。

入院治療ではメンタルケアも受けられますので、お酒を飲まない状態でもストレスコントロールが可能になります。

カウンセリングによる心理ケアも受けられますので、自分と家族が協力して断酒を試みるより成功率は高くなります。

そして退院後は断酒を決意し、一滴もお酒を飲まないようにしましょう。

少しくらいなら飲んでも大丈夫という甘えがあると、アルコール依存症を再発させるので注意してください。