高齢者ドライバーによる悲惨な事故が増えている中、免許返上の動きが推進されています。大きな事故が起こると一時的に免許返上を行う高齢者が増えるものの、思うように進んでいないのが実情です。なぜ進まないのか?様々な要因を検証します。
■高齢ドライバーによる死傷事故が絶えません。
そこで、高齢者の免許返納を義務化すべきではという議論も活発化しています。
もっとも、義務化のうえでは検討すべき事項や講じるべき対策も多いのが事実です。
■なぜ免許返納が必要なのか
自動車運転免許の取得には、年齢、その他の条件が必要なのはご存知のとおり。
そして 重大事故、その他で自動車運転免許が取り消されるのも現状です。
では、これほどまでに重大事故が多発しているのなら、自動車運転免許の返納制度の義務化も必要なのでは。
■自動車運転免許返納の問題点
しかし、どんな条件で返納義務を課すのか、年齢で一律に区切るとした場合は何歳になったら義務化するのか、納得のいく根拠を設けてスムーズな免許返納ができるように定めなくてはなりません。
また、義務化にあたっては、返納した高齢者がその後の生活に不便を感じることがないよう、公共交通機関の整備や高齢者の移動手段の確保などを講じておかなくてはなりません。
義務化にあたっては、このような問題も山積しているのです。
そのため、義務化がすぐに実現するのは難しいわけですが、その間にも高齢ドライバーによる大きな事故が起こるリスクがあります。
なぜ、自主返納では返納が進まないのか、返納の推進や義務化を図るうえで、どのような対策をすべきなのか見ていきましょう。
■地域による差と地方の事情
高齢ドライバーによる大きな死傷事故が生じると、一時的に返納者が増える傾向が見られますが、それでも地域差が大きいのが実際のところです。
バスや地下鉄、JRなどの公共交通機関が充実しているところやタクシーなども利用しやすい都心部では、自ら運転しなくても代替手段が確保しやすいため、自ら返納する方が増えてきました。
一方で、車がないと不自由する地方を中心に、自主返納は進んでいません。
車がないと買い物にも困る、病院にも行けないという高齢者、農業や漁業、林業従事者など高齢になっても家業を続けている方にとって、仕事のうえでも車は欠かせないからです。
地方ではバスや鉄道などの路線も充実しておらず、もともと車社会でマイカー利用者が多いため、タクシーの数も限られています。
さらに地方は少子高齢化が進んでおり、コミュニティバスを運用したくてもドライバーを募集すると高齢者が応募してくることやタクシードライバーの高齢化も進んでいます。
免許返納を年齢などで区切って義務化すれば、バスやタクシーのドライバーさえ見つからなくなるかもしれません。
返納を義務化する前に高齢者の足の確保や生涯現役で続けられる仕事の際にどうするかなどの議論や対策も講じる必要があるのではないでしょうか。
■家族からの進言と高齢者の反応
高齢者の中には仕事を続けるためや日常生活の移動手段としての必要性から、なかなか免許の自主返上には至らない方が多いのが現実です。
一方、家族や親族などは事故を起こす前に返納してほしいと考えている方がほとんどです。
独立して別居したお子様やお孫さんなどが、電話や帰郷する度に免許返納を促しても、なかなか思うようにいかないケースが少なくありません。
車が必要なのだから仕方ない、これまで一度も事故は起こしていない、自分は運転が得意だから大丈夫、子供に何か命令させる必要はないと頑なに拒む高齢者が多いのが実態です。
どのように促せば自主返納や義務化によるスムーズな返納ができるのか、心理的な面からのアプローチも必要ではないでしょうか。