日本では決済や契約の際にハンコを押印して書類を残すという、文化が根強く残っています。欧米ではサインで印鑑を押す習慣はありません。他の国々も、中国などごく一部の例外を除き、印鑑の習慣・制度はないようです。しかも一口にハンコと言っても、「実印」「銀行印」「認印」と、いろいろあります。
■印鑑の歴史
日本で最古の印鑑は北九州で発見された「漢倭奴国王」と刻まれた金印です。
印鑑は、まず、政府や地方の支配者の公の印として使われ始め、平安・鎌倉時代になって、個人の印として印鑑を押す習慣が定着したようです。
明治になって、公の印はすべて、法律の規定に従って、管理・使用されることになり、個人の印は印鑑登録制度が導入され現在に至っています。
■「ハンコ」と「印鑑」の違い
そもそも「ハンコ」と「印鑑」は異なり、「ハンコ」の正式名を「印章」(いんしょう)といいます。
「印影」(いんえい)という言葉もありますが、これは「ハンコ」=「印章」を押したときに紙にのこった朱肉のあとのことをいいます。
■具体的に「ハンコ」と「印鑑」の違いはなんでしょうか。
「印鑑」というのは「印鑑登録」という制度が象徴しているように、
1.市役所等役所で登録した「実印」
2.銀行などで登録した「銀行印」などの「印影」が「印鑑」なのです。
ただし、これらはあくまでも厳密な定義であって、日常的には、「ハンコ」も「印鑑」も同じ意味で使われています。皆さんもふだんは「ハンコ」=「印鑑」の認識で問題ないでしょう。
■「実印」「銀行印」「認印」の違い
では「認印」「実印」「銀行印」の違いとは何でしょうか。
重要な書類になってくると「確かに本人が押した」ということを証明しなくてはいけません。
その証明に必要になってくるのが「実印」です。
【実印】とは、市区町村の役所に登録した、公的に認められたハンコのことをいいます。
役所にハンコを登録することを印鑑登録といい、登録されたハンコを実印と呼びます。
印鑑登録をすると、印鑑証明書を取ることができます。
この証明書を書類に添付することで、「確かに本人が実印を使って押した書類」であることが認められます。
【銀行印】とは、銀行・信用金庫・信用組合などの金融機関に印影(いんえい)の届出をしているハンコのことをいいます。
なぜ銀行にハンコを届出るのかというと、お金を下ろす人が預金者本人かを確認する必要があるからです。
「普段ATMを使っていて、お金を下ろすときにハンコを使ったことなんてない」という人もいるかもしれません。
しかし、ATMを使った取引は金額に上限があるので、上限を超えるような高額な取引をするときは、ハンコを持って銀行の窓口に出向くことになります。
そのときに、預金者本人かを証明するための「銀行印」が必要になります。
実印と銀行印のハンコを分けている人もいれば、同じものにしている人もいるでしょうが、紛失した際のリスクなどを考えると、実印と銀行印は別々にした方いいという意見が多いようです。
いっぽうで「認印」にはそうした力はなく意思確認や承認などのサインとして使います。回覧板や宅配の受け取りなど日常的によく使うハンコですね。シャチハタを「認印」として使っている人も少なくないでしょう。
つまり、認印(みとめいん)とは、届出をしていない個人のハンコのことです。
読み方は、「みとめいん」と読むことが多いですが、「にんいん」と読んでも間違いではありません。
それぞれの使い分けは以下のようになります。
- 実印・・・市区町村の役所に届出をしているハンコ、法的な効力大、不動産登記等
- 銀行印・・・取引銀行に届出をしているハンコ、通帳にはセキュリティの為表示されません。
- 認印・・・届出をしていないハンコ(実印・銀行印以外)
■「シャチハタ」とは
決済や契約の時に「シャチハタ不可」と言われることがありますね。この「シャチハタ」とはいったい何を指すのでしょうか。
シャチハタと言うのはメーカーの名前で、かつてシヤチハタ株式会社が「インキ浸透印」(インクが内蔵してあるスタンプ式)を開発し、
朱肉が不要でどこでも手軽に使えると、広く普及した為、「朱肉の要らないインク付きのハンコ」を「シャチハタ」と呼ぶようになったのです。
「シャチハタ不可」とされる理由の一つは、シャチハタは大量生産されているものが多く、なりすまし防止の観点からです。加えて、シャチハタは印面がゴム製のため、使用するうちに擦り減って印面の形、つまり印影が変わってしまうという理由もあります。
「シャチハタ可」の書類一覧
会社での事務作業
社内書類の確認
宅急便の荷物の受け取り(サインでも可)
回覧(サインでも可)